石油価格の高騰、アジアの航空業界を直撃 大韓航空は緊急経営体制に移行

空港に停まっているジャンボジェットを斜め前から撮った写真。機体は上部が水色に塗られ、大韓航空のロゴ「KOREAN AIR」があしらわれている。手前にはタラップも見える

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画像説明, 大韓航空が運航するボーイング747(仁川国際空港)
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オズモンド・チア・ビジネス記者(シンガポール)、チェ・イヒュン記者(ソウル)

アジア各国の航空業界が、アメリカとイスラエルがイランと続ける戦争の影響に直面している。韓国の大韓航空は31日、急騰する航空燃料費の影響を緩和するため、緊急経営体制に移行すると発表した。

同社の広報担当は、財務管理に向けた「社内コスト削減策」を実施すると述べた。「燃料価格の上昇と世界的な経済不確実性の中」で、自社の「安定を確保するため」としている。

原油価格は2月28日に紛争が始まって以来、50%以上値上がりしている。航空燃料は、世界的に2倍以上に跳ね上がっている。

会計大手PwCシンガポールのコンサルタント、タン・チー・シャン氏によると、新型コロナウイルスのパンデミックのような危機に際して事業を守るためのものと、同様の緊急プロトコルを航空各社は採用している。

タン氏は、特にアジアの航空会社が、世界的な原油価格の上昇と地域的な航空燃料不足という「二重の衝撃」に直面し、対応を迫られていると付け加えた。

韓国

韓国は湾岸諸国の石油への依存度が高く、中東からのエネルギー供給の混乱にとりわけ脆弱だ。

ここ数日で大韓航空、アシアナ航空、格安航空エアプサンなど、複数の航空会社が緊急経営体制に入っている。

こうした措置は通常、設備の更新や諸投資を遅らせるといった社内的な対応だが、コスト削減のために運航便数を減らす航空会社もあると、前述のタン氏は話す。

大韓航空の禹基洪(ウ・ギホン)副会長はこの日、従業員に緊急措置について通知。BBCが入手した社内メモによると、同社が「燃料費の急騰」に備えていると書かれていた。

禹副会長は、原油価格に基く措置を通じてコストを削減すると説明。こうした動きは「単発の取り組みではなく」、同社の「構造的基盤を強化する」機会だと付け加えた。

中国・香港

中国は主要なエネルギー生産国だが、同時に世界最大の石油輸入国でもある。そのため、同国の航空産業は世界的なエネルギーショックの影響を受けやすい。

大手国有航空会社の一つ、中国東方航空は30日、世界的な混乱が今年の運航に重くのしかかる可能性があると警告した。

また、貿易環境や「地政学的な対立や戦争が、航空分野に比較的重大な影響を与え」、業績にも影響を及ぼす可能性があると述べた。

中国の航空会社の多くは、イランでの戦争が始まって以来、運賃に上乗せする燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)を引き上げている。

一方、国内のエネルギー価格の抑制を図るため、当局が製油所に対し、燃料の輸出停止を命じたと伝えられている。

香港では、キャセイパシフィック航空が全便に燃油サーチャージを適用しており、多くの運賃が大幅に上昇していると述べた。

日本

日本は国際的な交通拠点であるとともに、航空機部品の主要な製造国でもある。

全日本空輸(ANA)は、燃油サーチャージをイランでの戦争以前に設定したことから、4月と5月に発行される航空券についてはサーチャージを引き上げない方針を示している。

広報担当は、同社が既に燃油サーチャージを導入していることや、燃料価格を事前に確保する措置を講じてきたことから、現時点ではエネルギー価格上昇の直接的な影響は「限定的」だと述べた。

一方、日本航空(JAL)は、燃料不足について具体的な対応はまだ取っていないと述べた。

同社によると、中東路線の閉鎖後に需要が増加したことで、日本とヨーロッパを結ぶ便など一部の運賃が上昇している。

インド

インドの航空産業は、中東便が運休となったことで大きな打撃を受けている。中東は同国の国際線にとって最大の市場だ。

しかし、中東への渡航需要は今も残る。エア・インディアをはじめとする航空各社は、予定を新しく設けた便について日々、情報を更新している。

インドの航空当局は先週、今年3月から10月にかけて、同国の航空会社が運航する国内線の便数が約10%減少すると見込みだと述べた。

インド政府は23日、一時的に運賃上限を撤廃し、燃料費の急騰に対応して航空会社が自由に運賃を引き上げられるようにした。

インドの航空会社は過去1年間、対立を受けてパキスタンの領空を飛行することを禁じられており、その対応にも追われていた。

シンガポール

旅客機の尾翼越しに、空港の給油トラックを写した写真。尾翼は黄色で、シンガポールの格安航空スクートのロゴがあしらわれている

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画像説明, 航空機燃料の価格は、戦争開始以来2倍に跳ね上がった。写真はシンガポールのチャンギ空港

シンガポール航空と傘下の格安航空スクートは、航空機燃料価格の急上昇を受けて運賃を引き上げた。広報担当がBBCに述べた。

広報担当は、燃料費は同グループにとって最大の支出項目で、ここ数カ月の支出の約30%を占めていたと付け加えた。また、運賃の調整はコスト増加を「補填(ほてん)する」ものだが、増えた費用を全面的にカバーするわけではないとしている

シンガポールの民間航空当局は、イランでの戦争の影響を受け、今年4月から導入予定だったグリーン航空燃料賦課金の開始を延期する方針という。

この賦課金は、廃食用油や動物性脂肪などの廃棄物を含む再生可能資源から製造される持続可能な航空燃料を、シンガポールが調達するための財源となる予定だった。

航空分野はシンガポール経済の重要な一部で、国内総生産(GDP)の約5%を占めている。

東南アジア

ガソリンスタンドでトラックに給油する運転手

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画像説明, フィリピンは世界で初めて、この戦争を受けたエネルギー緊急事態を宣言した。写真は同国首都マニラのガソリンスタンド

フィリピンは24日、イランでの戦争への対応として、世界で初めて国家エネルギー非常事態を宣言した。

フェルディナンド・マルコス大統領は、同国の一部の航空会社が海外で給油できないと通知されたことを受け、燃料不足による運航停止が「十分にあり得る」と述べた。

ヴェトナムの航空当局は、サプライヤーによる供給が遅れているため、早ければ4月にも航空機燃料不足に直面する可能性があると警告した。

ヴェトナム航空はすでに、複数の国内線を運休している。

ヴェトナムは、石油のほぼ90%を中東から輸入している。

小規模の航空会社への影響

専門家らは、一般的には大手航空会社の方が、エネルギー逼迫の影響に対処する選択肢を多く持つと指摘している。

米航空コンサルタント会社アルトン・エヴィエーション・コンサルタンシーのブライアン・テリー氏は、湾岸地域の航空会社が中東に航空機を足止めされている状況を受け、各国の航空大手は機材の再配置によってその空白を活用できると述べた。

シンガポール航空はすでにロンドン便を増便したほか、豪カンタス航空も欧州各地への便数を増やしている。いずれも、湾岸の航空会社が運航している路線だ。

テリー氏は、大企業は長距離路線に使う機材を、需要が強く、より高い運賃を支払う顧客がいる路線へ振り向けることも可能だと指摘。たとえばカンタス航空は、通常はアメリカ便に使用する大型機材を、ここ数週間で需要が増えているヨーロッパ路線に回しているという。

一方、同社傘下の格安航空ジェットスターのような小規模の航空会社は、一部の便を削減している。

テリー氏は、燃料価格の上昇は、小規模航空会社、特にエネルギー効率の低い旧型機を保有する航空会社にとって最も厳しいものになると述べた。

「(小規模航空会社は)使える手段が少ない状態で、この危機を乗り切ろうとしている」