イラン有力議員、ホルムズ海峡の支配は決して譲らないとBBCに語る

リズ・ドゥーセット主任国際特派員
「決してない」。イランの有力国会議員エブラヒム・アジジ氏は、ホルムズ海峡の支配を手放す可能性について、そう話す。
「それは私たちの不可分の権利だ」。イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)元司令官で、現在は国会の国家安全保障・外交政策委員会の委員長を務めるアジジ氏は、テヘランでBBCの取材に応じ、言い切った。「(ホルムズ)海峡を通過する船舶への許可を含め、通行権はイランが決定する」。
アジジ氏は、そのことがまもなく法律として明文化されると言う。
「私たちは憲法110条に基づき法案を議会に提出する。それは環境、海上安全、国家安全保障に関する内容を含んでおり、軍が法施行にあたる」
戦略的に重要な水路の封鎖が世界中で経済への衝撃を拡大させるとの懸念が高まる中、今回の危機は一朝一夕に解決できる短期的なものではないことが明らかになりつつある。
イランはこの戦争で、同国が新たな武器と考えるものを手にした。紛争の過程で武器化させた極めて戦略的価値の高いこの海峡を、アジジ氏は「敵に立ち向かうための資産の一つ」と表現した。
アジジ氏は強硬派が支配する国会の重要人物だ。この戦争で生まれた新たな秩序の中で台頭しつつある、一部の意思決定者らの考えを反映する人物でもある。この秩序は、イスラエルの空爆でイランの高官が次々と殺害されたことでますます軍事色が強まり、IRGCを中心とした強硬派が大きな影響力をもっている。
イランは現在、極めて重要な石油・ガスタンカーなどの海上交通の支配を、進行中の交渉での切り札としてだけでなく、長期的に影響力を発揮するものとして捉えている。
「戦後にイランの最優先事項となるのは抑止力の回復であり、ホルムズ海峡はイランの主な戦略的影響力の一つだ」と、テヘラン大学のモハンマド・エスラミ研究員は説明する。
「イランは、海峡に関して同国が示す新たな枠組みから他国がどう利益を得るかを議論する用意はあるが、結局のところ肝心なのは支配だ」
周辺国とは見解に相違
だが、戦争の5週間でイランから攻撃され、激怒している近隣諸国の一部は、そうした未来を拒んでいる。現在、この戦争は一時的なもろい停戦状態にある。
アラブ首長国連邦(UAE)で大統領の外交顧問を務めるアンワル・ガルガシュ博士は、最近のインタビューで私に、イランがしようとしていることを「敵対的な海賊行為」だと表現した。
そして、イランがこの国際水域の支配を放棄しなければ、世界の戦略的重要度の高い他の水路にとって「危険な前例」になると警告した。
これに対し、イラン有力議員のアジジ氏は、「私たちの地域をアメリカ人に売り渡した国こそ海賊だ」と反論した。これは、中東各地に置かれている米軍基地を指した発言だ。それらの基地は、他のインフラと共に、イランのドローンやミサイルによって繰り返し攻撃されてきた。
アジジ氏は、アメリカこそが「世界最大の海賊」だと付け加えた。
さらに、「私たちは常に、この地域の安全確保には協力が必要だと訴えてきた」と強調した。
ただ、この見方は、ほとんどの湾岸諸国には受け入れられていない。唯一の例外はオマーンで、同国はこの地域において、イランの親密な友好国の一つであり続けている。オマーンはホルムズ海峡の南岸を支配しており、今月に入り、船舶の円滑かつ安全な通過の確保をめぐるイランとの協議に参加していた。
イラン内部でも意見に違い
イランの軍と政治エリートの中では、程度は定かではないが、意見の相違もうかがえる。
このことは、ホルムズ海峡は「完全に開かれている」との声明を17日にソーシャルメディアに投稿したアッバス・アラグチ外相に対し、珍しく強い口調の批判が向けられたことで明らかになった。
この批判には、アメリカのドナルド・トランプ大統領がすぐに反応。ソーシャルメディアに「THANK YOU(ありがとう)」と大文字で投稿した。
さらにその直後、IRGCとつながりのある報道機関がアラグチ氏を非難した。
国営メヘル通信は、アラグチ氏の投稿が「トランプ氏に、現実を超えて自らを戦争の勝者と宣言して勝利を祝う、絶好の機会を提供した」と報じた。
タスニム通信も、同氏の投稿は「ホルムズ海峡の再開について誤解を招くあいまいさを生み出した、間違いで不完全なツイート」だとした。
アラグチ氏は、ホルムズ海峡はIRGCの海軍が認可した船舶だけに開放されており、それらの船は通行料の支払いが必要な指定ルートを通る必要があると強調した。
政権内部に亀裂があるという見方を、アジジ氏は否定した。「国家安全保障に関しては、穏健派や強硬派のアプローチといったものは存在しない」。
この海峡の行方は、イラン国家の最高指導部で決定されることになる。21日にパキスタンの首都イスラマバードで再開される予定だと報じられている高官級協議では、これが核心的な議題の一つとなる。イスラマバードでは先々週末、歴史的な初の対面協議が実施された。
トランプ氏は米代表団を派遣するとしている。ホワイトハウス当局者はBBCに、代表団は再びJ・D・ヴァンス副大統領が率いると話した。

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イラン当局は、モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長率いる同国代表団が再びパキスタンに行くのかについて、沈黙している。イランのメディアは、アメリカがイランの港湾を出入りする船舶を対象とした封鎖措置を続ける限り、イランは参加しないと報じている。
トランプ氏は、この海上回廊を開くようイランに繰り返し命じている。今月5日にはソーシャルメディアに放送禁止語を交えた投稿をし、イランは命令に従わなければ「地獄のような生活を送る」ことになると警告した。
トランプ氏は現在、イランがアメリカを「脅迫」しようとしていると非難している。
これに対しアジジ氏は、「真実をねじ曲げる男に大したことは期待していない」と冷笑する。「私たちはアメリカの脅迫を前に、自分たちの権利を守っているに過ぎない」。
多くのイラン高官と同様、彼も皮肉たっぷりの投稿をたびたびXに出し、トランプ氏に反撃している。こうした挑発的な投稿は、大多数のイラン国民が数週間にわたってほぼ完全なデジタル遮断状態にある中で、高官らがインターネットにアクセスしていることを如実に示している。
アジジ氏は、デジタル遮断がいつ解除されるかは明らかにせず、「敵を利することがないよう、安全が確保された時点で制限を解除する」とだけ強調した。
アジジ氏に対し、イランでの最近の逮捕の波と、アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体が指摘している、1月の全国的な抗議活動で拘束された参加者ら数十人に対する死刑判決について聞いた。この抗議活動では、殺傷力のある実力部隊による鎮圧で、何千人もが殺害された。最近では、若者を含む数人の死刑が執行されている。
アジジ氏は、アメリカの中央情報局(CIA)とイスラエルのモサドという両国のスパイ機関が騒乱に関与していたという、イラン政府の主張を繰り返した。
国内の治安対策がさらに強化されるのではないかとの懸念が一部のイラン国民の間で高まっていることについては、まったく問題ないとした。
「戦争では、たとえ停戦中でも、ルールがある」と、アジジ氏はきっぱりと言った。











