原油価格が急落、米・イランの「2週間攻撃停止」合意受け ホルムズ海峡開放が条件
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アメリカとイランが7日、重要な海上輸送路であるホルムズ海峡の再開放などを条件とした、2週間にわたる攻撃停止に合意したことを受け、世界の原油価格は急落し、株式市場は急騰した。
原油価格の指標となるブレント原油は1バレルあたり94.80ドル(約1万5000円)と、前日比約13%下落した。アメリカで取引される原油の価格は同約15%以上下落し、1バレルあたり95.75ドルとなった。
それでも原油価格は、この紛争が始まった2月28日以前の水準よりも高いままとなっている。開戦前は1バレルあたり約70ドル(約1万1000円)で取引されていた。
米・イスラエルによる空爆への報復として、イランがホルムズ海峡を通過しようとする船舶を攻撃すると警告したことで、中東からの石油・ガス供給は深刻な打撃を受け、エネルギー価格が急騰していた。
アジア太平洋地域の株式市場では8日午前、主要株価指数が上昇した。日本の日経平均株価は約5%、韓国のKOSPI指数は約6%、それぞれ上がった。
香港のハンセン指数は2.8%、オーストラリアのASX200は2.7%上昇した。
アメリカの株価指数先物も、米ウォール街で8日に高値で取引が開始される可能性を示した。先物取引とは、将来の日時を指定して決められた価格で資産を売買する契約で、アメリカの場合、取引が開始される前の市場の見通しを示す指標となり得る。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日夜、「私はイランに対する爆撃と攻撃を2週間停止することに同意する。(中略)イラン・イスラム共和国がホルムズ海峡を完全かつ即時、安全に開放することに同意するのが条件だ」と、ソーシャルメディアに投稿した(太文字は原文では大文字)。
ホルムズ海峡の再開放をめぐっては、トランプ氏は、米東部時間7日午後8時(日本時間8日午前9時)を合意の期限に設定。合意が成立しなければ「今夜、一つの文明がまるごと滅びることになる」と警告していた。
イランのアッバス・アラグチ外相は、イラン政府は「イランへの攻撃が停止されるなら」攻撃の一時停止に同意し、ホルムズ海峡の安全な通航も「可能になる」と、ソーシャルメディアに投稿した。
市場調査会社アルファセンスのザビエル・スミス氏は、トランプ氏は脅しをかける一方で、紛争を激化させてエネルギー価格を「急騰」させることには慎重だった可能性が高いと指摘した。
もしそうした事態になれば、「自ら招く経済的打撃」につながりかねず、そのリスクを取れる人はほとんどいないと、スミス氏は説明。トランプ氏の場合、指導力に対する支持率への影響を考慮すれば、なおさら困難だとした。
調査会社MSTマーキーのソール・カヴォニック氏は、攻撃が停止される2週間で、ホルムズ海峡周辺では足止めされていた石油タンカーが通過できるようになる可能性があるとし、そうなれば今後数週間で市場に一定の安心感をもたらすだろうと述べた。
紛争が続く中でも、ホルムズ海峡を通過する船舶はいくつか見られた。ただ、その数は平時よりもはるかに少ない。
インド、マレーシア、フィリピンなどのアジア諸国はここ数週間、自国の船舶の安全な航行を確保するために交渉を進めてきた。
中国も、開戦以降に自国の船舶数隻がホルムズ海峡を通過したことを認めている。
こうした中、フランスの海運会社CMA-CGMが所有するマルタ船籍のコンテナ船がホルムズ海峡を通過したと、同社傘下の仏放送局BFMが3日に明らかにした。
また、日本の海運大手の商船三井も、天然ガスを運搬する日本関係の船舶がホルムズ海峡を通過したことを認めている。
中東のエネルギー施設の修復は
MSTマーキーのカヴォニック氏は、2週間の攻撃停止で合意したとはいえ、持続的な和平合意が実現するという確信が得られるまでは、中東のエネルギー生産が全面的に再開される見込みは低いとの見方を示した。
また、中東のエネルギーインフラが損傷を受けたことで、生産の再開には数カ月を要する可能性があるとした。
イランは米・イスラエルの空爆への報復として、石油資源が豊富な中東各地でエネルギー施設や産業インフラを標的とした攻撃を続けてきた。
エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーによると、中東地域が受けた被害の修復には数年を要し、その費用は250億ドル超に上る可能性がある。
先月中旬には、世界の液化天然ガス(LNG)の約5分の1を生産するカタールのラス・ラファン工業団地がイランの攻撃を受け、エネルギー価格が急騰した。
カタールの国営石油会社カタール・エナジーは、ラス・ラファン工業団地にある同社の施設がイランのミサイル攻撃を受けたと発表。イランによる攻撃後、カタール・エナジーは輸出能力の約17%が影響を受けると述べた。被害の修復には最大5年かかるとした。
アジア諸国に打撃
イランとの戦争がもたらした経済的な影響は、湾岸地域のエネルギーに大きく依存する国が多いアジアにとって、とりわけ大きな打撃となっている。
アジア各国の政府や企業はこの数週間、エネルギー価格の高騰や燃料不足に対処するための措置を打ち出している。
石油の98%を湾岸地域から輸入するフィリピンは先月24日、同国の軽油とガソリンの価格が2倍以上に跳ね上がったことを受け、国家エネルギー非常事態を宣言した。米・イスラエルとイランの戦争を受けたものとしては、世界初。
アジアの多くの航空会社も、ジェット燃料価格が急騰していることから、運賃の引き上げや減便に踏み切っている。
日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の久谷一朗氏は、アジアの途上国の多くは製油所や十分な石油備蓄をもたず、この紛争の影響を特に大きく受けていると指摘。そのため、2週間の攻撃停止合意は、アジア諸国にとって朗報だとした。
また、攻撃停止が維持されれば原油価格はいずれ正常な水準に戻るだろうとしつつ、そうなるまでには時間がかかると述べた。
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