【解説】米・イスラエルとイランの戦争、誰が何を望んでいるのか
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フランク・ガードナー安全保障担当編集委員(サウジアラビア・リヤド)
全員がそうではないにしても、ほとんどの人は、この戦争ができるだけ早く終わってほしいと願っている。しかし、どういう条件で終わるのが望ましいのか。立場によって、そこで意見が分かれる。
アメリカ
ドナルド・トランプ大統領の戦争目的はこれまでのところ、いささか不透明だ。単にイランの核開発計画を縮小させるか、アメリカとイスラエルのすべての要求をのむようイランを屈服させるか、イランの体制を完全に崩壊させるか――。これらの間で揺れ動いているように見える。
これまでのところ、イランは屈服も崩壊もしていない。だが、16日間にわたる容赦ない精密爆撃によって、軍事力は著しく弱体化している。
アメリカとイランは、2月にスイス・ジュネーヴであった、オマーンを仲介役とする間接協議で、核問題に関して進展を見せていた。
オマーンによると、イランは、核兵器の保有を目指していないと確かに保証するような大幅な譲歩をする用意があったという。
一方でイランは、弾道ミサイル計画の縮小や中止、中東におけるイランの代理組織(イエメンの反政府勢力フーシ派、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど)への支援については、議論の余地はないとした。
アメリカや、その同盟国の多くにとって理想的なのは、この戦争がイスラム教指導者による支配の崩壊をもって終結し、イラン国民や近隣諸国を脅かさない、平和的で民主的に選ばれた政府が速やかに樹立されることだ。ただ、16日の時点で、そうなる兆しはまったく見られない。
アメリカにとって次に望ましいのは、深刻な打撃を受けたイランが行動を改め、国民に対するひどい扱いをやめ、中東の過激な民兵組織への支援を打ち切ることだろう。しかしこれも、イランが新しい最高指導者に、強硬派で知られた前任の故アリ・ハメネイ師の息子モジタバ・ハメネイ師という、アメリカ政府を最もいらだたせそうな人物を選んだことを思うと、実現はあり得ないように思える。
世界的な原油価格の高騰、ホルムズ海峡の一部封鎖、そしてアメリカがまたも多大な犠牲を伴う中東紛争に巻き込まれつつあるというアメリカ国内の不安の高まりを受けて、トランプ氏には、この戦争をやめるよう求める圧力が高まるはずだ。そうした状況で、イラン政権が懲りることなく挑戦的な姿勢のまま生き残れば、トランプ氏がそれを自分の失敗ではないと主張するのは難しいだろう。
イラン
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イランはできるだけ早く戦争を終わらせたいと考えている。だが、どんな代償を払ってでも、というわけではない。アメリカの要求を丸のみすることは受け入れられない。
イランは、この戦争でトランプ氏より長く持ちこたえるための「戦略的な忍耐力」が、自分たちにはおそらくあるとわかっている。さらに、地理的な利点もある。
イランの海岸線は、湾岸諸国の中で最長だ。そして、ホルムズ海峡の狭い要衝を通過する、世界の石油供給量の約2割を運ぶ船舶に対し、無期限に脅威を与えることができる。
トランプ氏は、自分とイスラエルが一緒に始めた戦争の余波への対処で、各国に支援を求めている。だが、各国の反応は消極的だ。イギリスやヨーロッパ、その他の国々は、そもそもこの戦争を支持していない。そのような状況で、自国の海軍を危険にさらしてホルムズ海峡を航行する商船の護衛にあたることに、各国は慎重だ。
イランは公式には、自分たちはもう攻撃されないという確実な保証を得られない限り、この戦争は終わらないと主張している。また、アメリカとイスラエルの空爆が引き起こした何十億ドルにも相当する損害に対し、戦争賠償金も求めている。イランはおそらく、そのどちらも得られないことはわかっている。しかし、イランの指導部と革命防衛隊(IRGC)は、この紛争を乗り切ることさえできれば、国民と世界に向けて、勝利したとアピールすることができる。
イスラエル
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交戦当事国の3カ国、アメリカ、イラン、イスラエルのうち、この戦争の終結を最も急いでいない様子なのがイスラエルだ。同国は、イランの弾道ミサイルの備蓄を可能な限り破壊したいと考えている。また、イランの兵器貯蔵施設、指揮統制センター、レーダー基地、そして革命防衛隊の基地も破壊したい意向だ。
もちろん、これらはすべて、戦闘が終われば再建が可能だ。そのためイスラエルは、再建には多大な代償を伴うことをイランに理解させたいと考えている。つまり、再建しようものならイスラエル空軍は、数カ月後にはまた戻り、再建した施設を爆撃できるのだと、イランに理解させようとしている。
イスラエルは、イランのミサイルと疑惑の核開発計画を、自分たちの国家存亡に関わる脅威とみなしている。
イランには、少なくともこの戦争が始まるまでは、国産ミサイルとドローンを製造する高度に発展した産業があった(イランは同盟国ロシアに、ウクライナへの激しい攻撃で使用されているドローン「シャヘド」を提供している)。
イランはまた、民生用の原子力発電に必要な水準をはるかに上回る濃縮度60%までウランを濃縮している。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエル政府は、この二つの脅威について、イスラエルにとって容認できないものだとみなしている。
湾岸諸国
湾岸諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、クウェート、オマーン)は、海を挟んだイランとは共存できると考えていた。今回の戦争が始まる前までは。
湾岸各国は、イランに対する今回の戦争を自分たちは支持しないと表明したにもかかわらず、イランによるドローンやミサイルの攻撃がほぼ毎日続いていることに激怒している。
16日も最初の数時間だけで、サウジアラビア国防省は自国に向けられた60発以上の飛翔(ひしょう)体を迎撃したと発表した。
湾岸国の当局の一人は、「一線を超えた」と言った。「私たちとテヘラン(イラン)の間の信頼関係は皆無だ。今後も。正常な関係を持つことはできない」。
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