エアコン依存のシンガポール、エネルギー危機で苦慮 設定温度上げるよう指示
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エアコンの普及率の高さで知られるシンガポールの当局は8日、政府職員に対し、オフィスの室温を25度以上に設定するよう指示した。同国も他の東南アジアの国々と同様、イラン情勢を受けたエネルギー価格の高騰に悩まされている。
シンガポールの持続可能性・環境省は「設定温度を1度上げるごとに、エネルギー需要は約10%減る」としている。政府職員に対しては、扇風機への切り替えや公共交通機関の利用も呼びかけている。
官公庁はエネルギー節約のため、LED照明器具やスマートセンサーなどの省エネ技術を導入する。
同様の対応は、一般企業や国民にも呼びかけている。
東南アジア諸国は、ホルムズ海峡を通って運ばれる石油・ガスに大きく依存している。同海峡はアメリカ・イスラエルとイランとの戦争が始まって以降、事実上封鎖されているため、各国が省エネ対策に乗り出している。
タイ当局は、エアコンの設定温度を26~27度にするよう国民に求めている。シンガポールは今回、そうした流れに加わった。
米エネルギー情報局(EIA)によると、シンガポールが輸入する原油の約3分の2は中東諸国からのものだ。そのためシンガポールでは燃料価格が上昇しており、当局は国民に、経済の混乱に備えるよう警告している。ただ、今回の中東での戦争では、燃料備蓄の放出や配給の実施には至っていない。
エアコンとの切っても切れない関係
シンガポールでは、エアコンが大きな役割を果たしている。現代シンガポールの「建国の父」と呼ばれるリー・クアンユー元首相が1999年、暑い日でも屋内での仕事を可能にし、「熱帯地域の人々の生活を変えた」と言って、エアコンをたたえたのは有名な話だ。
リー氏は、「私が首相に就任して最初にしたことは、役人が働く建物にエアコンを設置することだった。行政事務の効率化にとって大事なことだった」と述べたとされる。
現在、シンガポールでエアコンのないオフィスはほとんど見当たらない。一方、その使い方をめぐっては、過剰との意見もある。
室温の設定が非常に低いため、仕事中にカーディガンやセーターを着ている人も珍しくない。
東南アジアの多くの都市ではショッピングストリートが屋外にあるのに対し、シンガポールのショッピングモールはほぼ全面的に空調が効いている。
この都市国家を走るすべてのバスや電車も冷房完備だ。
一般家庭も大半がエアコンを設置している。夜通しつけっぱなしという家も多い。
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湾岸諸国の石油への依存度が高い他のアジア諸国も、代替供給源の確保や燃料価格高騰の影響を抑制する方策を急いで模索している。
石油の98%を中東から輸入しているフィリピンは、節電のため政府機関の開庁日を減らした。政府機関には、電力と燃料の使用の削減も指示した。
フィリピンは、ここ数週間でガソリン価格が2倍以上に高騰したことを受け、3月に今回の戦争を受けて世界で初めて国家エネルギー非常事態を宣言した。
タイもまた、公務員に在宅勤務を命じるなど、緊急の節電措置を講じている。
タイの国民は、エアコンの設定温度を26~27度に保ち、車の相乗りや公共交通機関の利用をすることで、燃料を節約するよう求められている。
エネルギーの3分の2以上を湾岸諸国から輸入している韓国も、節電キャンペーンを開始した。シャワーの時間を短くし、洗濯機は週末のみ使用するよう、国民に呼びかけている。
日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の久谷一朗氏は、今回の中東における戦争の経済的影響は「アジア危機」ともいえるとした。
同氏はまた、ガソリン車やガスに依存する世帯が極めて多い発展途上国が、特に深刻な打撃を受けていると指摘。
長期的には、この危機はアジアにとって、石油を効率的に利用し、供給源を多様化することを学ぶ苦い教訓になったと述べた。
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