【解説】 トランプ氏がNATO離脱についてまた発言、今回はどんな意味があるのか

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画像説明, NATO海軍の黒海での演習「シー・シールド26」に参加したルーマニア海軍のフリゲート艦
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リーズ・ドゥセット国際担当主任編集委員

アメリカのドナルド・トランプ大統領が1日付の英紙デイリー・テレグラフのインタビューで、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退を検討していると述べた。

トランプ氏が繰り出す数々の警告の中で、NATO離脱は最も頻繁に振りかざしているものの一つだ。

今回、またそれを口にしている。

テレグラフのインタビューでは、アメリカのNATO加盟を見直すかと問われ、「その通りだ。(中略)見直しの域はもう超えていると言える」とトランプ氏は返答。アメリカがイスラエルと共に進めている対イラン軍事作戦に、アメリカの同盟国が参加していないことへの憤りを改めて示した。

そして、「そうなるのは当然だと思う」と強調した。

トランプ氏のこうしたののしりの言葉は、32カ国でなるこの軍事同盟がどう機能するのか、同氏が相変わらず誤解していることを浮き彫りにしている。

NATO条約の第5条は、集団防衛について規定している。一つの加盟国に対する攻撃は、すべての加盟国に対する攻撃とみなすと。ただ、この原則は加盟国の見解の一致のうえに成り立つ。さらに、1949年につくられたこの条約は、ヨーロッパと北米における危機にしか言及していない。

加盟各国は、事前に相談のなかった戦争に加わわるのを控えている。トランプ政権から発せられる矛盾したメッセージによって、依然として目的を理解できないでいる。

これまで第5条が発動されたのは、2001年9月11日の米同時多発攻撃の直後の一度きりだ。

トランプ氏はテレグラフのインタビューで、ウクライナにも触れ、「私たちは自動的に介入してきた。ウクライナについてもだ」と述べた。

2022年2月にロシアがウクライナに対して全面侵攻をした直後には、当時のジョー・バイデン米大統領は、西側諸国の対応を形づくるうえで主導的な役割を果たした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の行動について、西側各国を脅かすものだと考えたからだった。

この紛争では、NATOは同盟組織として支援を提供したが、当事者として直接関与する危険な事態は避けてきた。

トランプ氏は2017年にホワイトハウスに入る前から、NATOを「張り子のトラ」で「時代遅れ」だと軽視する発言を繰り返していた。そして、アメリカに「膨大な費用負担をかけている」と批判していた。

今年に入ると、トランプ氏はNATOを嘲笑。もしアメリカがNATOの執行役になっていなければ、ロシアはウクライナの全土を占領していただろうと述べた。

大統領1期目の2019年初めには、トランプ氏がNATOを離脱しかけたことがあった。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ前事務総長は「トランプが脅しを実行に移そうとしている明確な兆候が見られた」と近著「On my Watch」で記している。

ストルテンベルグ氏によると、同氏はそうした状況で、米FOXニュースに出演し、トランプ氏がNATO加盟国に対して軍事費の増額を迫ったことをたたえた。

すると、トランプ氏は即座に、ソーシャルメディアでその称賛について言及。その後、アメリカの脱退に関してホワイトハウスが起草していたとされる演説をするのを、トランプ氏はやめたという。

トランプ氏が強く気にしていたのは、加盟各国が国内総生産(GDP)の2%を防衛費に充てるという2014年の合意だった。当時、それは単なる「指針」でしかなかった。

だが、トランプ氏の脅しへの対応と、ロシアの脅威の高まりもあり、NATO加盟国はほぼすべてが、これまでに軍事費を大幅に増加させている。

今回の新たな危機は、欧州諸国やカナダの防衛力と、安全保障を自力で賄うことへの決意をさらに強めるものだ。とはいえ、米軍の戦力が極めて重要だという冷厳な事実は変わらない。

NATOの防衛費総額の約62%をアメリカの軍事予算が占めている。米国防総省は、他国が追いつけないほどの戦力と情報能力を有している。

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画像説明, トランプ氏はアメリカのNATO加盟について再考していると英紙テレグラフに語った

今回は、かつてはNATO支持者だったと自分のことを説明するマルコ・ルビオ国務長官も、トランプ氏に同調している。

「残念ながら、この紛争が終結した後、私たちが関係を再検討せざるを得ないことは間違いないと思う」とFOXニュースに話した。

ルビオ氏はまた、ヨーロッパにある米軍基地についても言及。それらを「アメリカの利益を守るために」使用させないことは「NATOが一方通行」であることを意味すると述べた。

イギリスは当初、同国にある基地の米軍戦闘機による使用を拒否したが、後に方針を転換し、「防衛作戦」であれば基地使用を認めると表明した。この対応の遅れについては、トランプ氏や、自らを「戦争長官」と称するピート・ヘグセス米国防長官が、今もあざけり続けている。両者はイギリスのキア・スターマー首相を「チャーチルではない」と、第2次世界大戦時の英指導者を引き合いにしながら嘲笑し続けている。

一方、イタリアは3月31日、中東での戦闘任務に向かう米軍機に対し、イタリア国内の基地への着陸許可を拒否した。スペインも、イランに対する作戦を行う米軍機に対し、自国の空域を閉鎖している

ルビオ氏は、今回の問題では「最終的には」大統領が決定すると付け加えた。

だが、それは大統領一人だけの決定ではない。

米議会は2023年末、上院の3分の2以上の賛成か議会の同意なしに、大統領が一方的にNATOを脱退するのを禁止する法案を可決した。

NATOの指導者、なかでもマルク・ルッテ現事務総長は、アメリカのNATO残留がトランプ氏にとってもアメリカにとっても利益になると説得するのに、再び時間を費やすことになるだろう。

ルッテ氏は、ストルテンベルグ氏と同様、予測不可能なトランプ氏を味方につけようと公私を問わず尽力していることから、「トランプのささやき役」と呼ばれている。称賛という武器を駆使する元オランダ首相のルッテ氏は、今年初め、NATO加盟国デンマークの半自治領のグリーンランドを「奪う」と脅したトランプ氏を、危機の瀬戸際から引き戻す上で重要な役割を果たしたと広く見られている。

一方でルッテ氏は、アメリカのイランとの戦争について、トランプ氏が「全世界を安全にするため」に行っているとして断固支持しているのは行き過ぎだとして、NATO加盟諸国から批判を浴びている。

ただ、ルッテ氏の最優先事項は、ウクライナや中東、そしてホワイトハウスからの脅威が高まる中で、77年の歴史を持つNATOを崩壊させないことにある。