【解説】 イランがアメリカとの協議を拒否、深い不信感の反映

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アミル・アジミ BBCペルシャ語
ドナルド・トランプ米大統領がこのほど、戦争終結に向けてアメリカとイランが「とても良い、生産的な会話」を行ったと述べると、イランは素早く、そして率直に反応した。
イラン政府当局者は、何の協議も行われていないと否定した。軍の報道官は、トランプ氏の言い分をあてこすり、アメリカは「自分自身と交渉している」と述べた。
隔たりは明らかだ。アメリカは進展を語り、イランはこれを全面的に否定している。しかし、これは単なる意見の相違ではなく、深い不信感の表れだ。
その不信感は最近の出来事によるものだ。
過去1年の協議で、緊張緩和への期待が高まる局面は、2回あった。2月末の直近の協議については、仲介したオマーンが、イランの核計画についてアメリカの主な懸念が話し合われたと述べていた。
しかしその2回とも、その後にイスラエルとアメリカはイランを攻撃した。
イランの視点からすると、協議しても戦争の可能性は減っていない。むしろ、協議は戦争の直前に行われてきた。だからこそイランは、トランプ氏の言い分を疑っている。
しかし、イランが協議の実施を否定しているからといって、必ずしも協議することに反対しているわけではない。実際にはもっといろいろなことが起きている。
外交を支持する当局者でさえ、圧力にさらされている。再び交渉を試すのは、リスクを伴う。今回はこれまでと違うのだと、はっきり示す材料はない。
こうした背景があるからこそ、アッバス・アラグチ外相ら当局者は厳しい口調で話している。トランプ氏が23日に自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿する前から、アラグチ外相はイランは協議も停戦も求めていないし、戦いを続ける用意があると述べていた。
イラン政府情報評議会のエリアス・ハズラティ議長は15項目の提案を退け、「トランプの言葉はうそだ。注目するべきではない」と述べた。
とはいえ、扉が完全に閉じられているわけではない。
アラグチ外相は25日深夜、アメリカの提案を完全に肯定も否定もしなかった。
外相は国営テレビに対し、「いくつかの案」が政府首脳に提示されたとして、「もし立場を示す必要があるなら、必ず決定される」と述べた。
外相はさらに、現在のイランの方針は「防衛」の継続であって、政府は「現在、交渉するつもりはない」とも発言した。
イランでは現在、攻撃が続き、重要インフラが損傷している。持続可能な状況ではない。政府首脳の強い物言いは、外交を完全に拒否するのではなく、条件を設定するためのものかもしれない。
イラン国内の政治事情も、事態をいっそう複雑にしている。
穏健派が支持するマスード・ペゼシュキアン大統領は、慎重な姿勢をとっている。一方、強硬派は協議に強く反対している。
同時に、穏健派でさえ現在の状況では交渉を主張しづらくなっている。
政府外部からの圧力もある。
一部の反政府勢力は、イスラム共和国との一切の合意に反対し、戦争による体制崩壊を期待して攻撃を支持してきた。
市民や人権活動家の間には、もし合意が成立すれば、すでに戦時下で強まっている国内の締め付けがさらに強化されるのではないかと懸念する声もある。
イランの姿勢は、イデオロギーだけでなく戦略にも関係している。
イラン政府は紛争が激化して以来、ホルムズ海峡を通じた世界のエネルギー供給を混乱させることが自分たちには可能だと示してきた。この航路の封鎖や制限は、石油・ガス市場だけでなく、それ以外のサプライチェーンにも影響を与えている。
これはイランが力を駆使できる「てこ」の一つだ。イランが強硬姿勢をとることで、「てこ」による圧力を維持できる。
トランプ氏の提案は、パキスタンを通じてイランに伝えられたとされる。報道からは、その内容がイランにとって受け入れがたいものであることがうかがえる。アメリカ案には、制裁緩和や民生用核エネルギー支援と引き換えに、イランの核能力、ミサイル計画、地域同盟勢力への支援を厳しく制限する内容が含まれているようだ。
たとえ合意に前向きだったとしても、イラン当局者にとって最大の問題は信頼だ。過去の合意は長続きしなかった。
イランと世界主要国が長年の協議を経て2015年に結んだ核合意も、トランプ氏の下でアメリカが一方的に離脱し、最終的に崩壊した。イラン政府の間では、新しい合意も維持されないだろうという疑念が根強い。
このため、双方の隔たりは広がり続けている。
トランプ政権にとって、進展を語ることはその政治的、外交的な目的につながるかもしれない。
一方、イランの政権にとっては、協議を否定することは自分の立場を守る手段となるし、実際の疑念も反映している。
現時点では、アメリカの楽観姿勢とイランの拒否姿勢の隔たりは続く可能性が高い。
これを埋めるには言葉以上のものが必要となる。協議がまたしてもいっそうの紛争につながることはないとする、確かな保証が必要だ。トランプ氏はそれを、国内でも示す必要があるかもしれない。大統領は、中東で「戦争を始めるのではなく終わらせる」と約束してきたのだから。









