【解説】 トランプ氏、時間稼ぎには成功 イランとの和平は困難なまま

画像提供, DANIEL HEUER/POOL/EPA/Shutterstock

画像説明, トランプ米大統領
この記事は約 5 分で読めます

ダニエル・ブッシュ・米ワシントン特派員

米首都ワシントンでは、21日はめまぐるしい外交の一日として始まった。J・D・ヴァンス副大統領が、イランとの和平に向けた新たな協議のためにパキスタンの首都イスラマバードに向かう予定で、副大統領専用機(エアフォース・ツー)は準備が整っていた。

それから何時間かたっても、エアフォース・ツーは離陸しておらず、協議が延期された。ドナルド・トランプ大統領は、22日夜に期限切れとなる予定だったイランとの停戦の延長を発表。イラン政権に、戦争終結のための「統一案」をつくり出す時間を与えるためだとした。

この間、戦争の終結が近づいているのかと世界が気をもむ中で、トランプ氏は選択肢を検討していた。トランプ氏は結局、戦争をエスカレートさせるという脅しを引っ込めた。こうした決定は、この2週間で2度目だった。これによって同氏は、開始から2カ月になろうとする紛争の収束のための時間を稼いだ。

ヴァンス氏は、イスラマバードに行くとは公式には発表していなかったため、ワシントンでは臆測が飛び交った。一方、イランも協議への参加は公式には確約していなかった。それによってホワイトハウスは、イランが協議の場に現れる保証すらない状況でヴァンス氏の派遣について決定しなくてはならないという、難しい立場に置かれた。

時がたつにつれ、協議延期の兆しが見え始めた。ヴァンス氏率いる米協議団の上級メンバーのスティーヴ・ウィトコフ特使と、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏は、マイアミからイスラマバードへ直行せず、ワシントンに飛んだ。まもなくして、トランプ氏と上級顧問らが今後の対応を協議する中、ヴァンス氏は「政策会議」のためホワイトハウスへ向かった。

最終的には、トランプ氏は「トゥルース・ソーシャル」で停戦の延長を発表した。今回の戦争が2月末に始まってから、戦況報告の方法として好んで利用してきた自身のソーシャルメディアだ。

トランプ氏は、イランとアメリカの協議を仲介してきたパキスタンの要請を受けて延長を決定したと説明。「私たちはイランに対する攻撃を、同国の指導者および代表者らが統一案を提示するまでの間、停止するよう求められた」とした。

注目すべきは、トランプ氏が今回、停戦の期間に具体的に言及しなかった点だ。今月に入ってトランプ氏は、最初の停戦で2週間の期限を設けた。これは、報道陣とのインタビューでトランプ氏が、矛盾した発言をした後のことだった。同氏は協議は順調に進んでいるとした一方、イランが交渉を拒むなら戦争再開も検討すると警告していた。

駐イラクと駐トルコの米大使を務めたジェイムズ・ジェフリー氏は、戦争を終わらせるための「明確な方程式はない」とBBCに話した。

ジェフリー氏はまた、「大幅な軍事的エスカレーションで脅しをかける」一方で、「良い合意案を提示する」アメリカ大統領は、これまでもいたと述べた。

画像提供, REUTERS/Akhtar Soomro

画像説明, 「イスラマバードへようこそ」と英語で表示されているデジタルスクリーン。パキスタンは2回目の和平協議の開催に向け、アメリカとイランを迎え入れる準備を進めていた

トランプ氏が21日に発表した、期限を明確にしない停戦延長の声明は、これまでに同氏がソーシャルメディアで繰り広げてきたイランに対する攻撃と比べると、慎重なものだった。このことは、世界経済を混乱させ、トランプ氏のMAGA(アメリカを再び偉大に、の頭文字)支持基盤の非介入主義者らに不人気なこの戦争を終わらせたいという、トランプ氏の強い思いを示している可能性がある。

アメリカの中東研究所のブライアン・カトゥリス上級研究員は、「これは、イラン政府の現指導部に存在する極めて明白な亀裂に基づいた、現実的な決断だ」と述べた。

一方で、トランプ氏の決定は、戦争がいつまで続くかについてさらなる不確実性を生み出したとも、カトゥリス氏は指摘した。

「今回の動きはトランプ氏に、アメリカ国民が直面している経済的苦痛や、自身が支持基盤から受けている政治的苦痛にどう対処するかという問いを突きつけている」

「彼は依然として、この危機をあおっているこうした疑問に答えていない」

停戦の延長により、アメリカとイランは、より耐久性のある和平合意を結ぶための時間を手に入れた。だが、大きな課題は残されたままだ。

イランは、ホルムズ海峡でのアメリカの封鎖措置は戦争行為だとしている。トランプ氏は、直ちに戦争を再開することは選ばなかったが、封鎖を解除する意向は示さなかった。アメリカはこの封鎖で、イラン側に譲歩を迫れると期待していた。今のところ、そうしたことにはなっておらず、トランプ氏にとっては、軍事作戦を強化する以外の選択肢は限られた状況となっている。

一方でイランは、核開発計画の終了や、中東における代理組織への支援停止について、前向きな姿勢は示していない。これらは、トランプ氏が最終的な和平合意に盛り込むよう要求してきた「譲れない」2点だ。

トランプ氏は時間稼ぎに成功した。しかし今のところ、この戦争の早期解決はこれまで同様、難しいままと思われる。