オーストラリアで最高位勲章の元軍特殊部隊員、アフガニスタンでの戦争犯罪で起訴

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オーストラリアの存命の軍人で最も多くの勲章を受けた、ベン・ロバーツ=スミス元伍長(47)が7日、アフガニスタンでの戦争犯罪などの疑いで逮捕・起訴された。
オーストラリア国防軍(ADF)特殊空挺部隊(SAS)所属だったロバーツ=スミス元伍長は、最大都市シドニーの空港で身柄を拘束された。殺人に絡む5件の戦争犯罪に関して裁判にかけられる。拘置所で一晩過ごし、8日の保釈聴聞会に臨む。
元伍長は2011年、オーストラリアの軍人にとって最高の栄誉とされるヴィクトリア十字章を授与された。2013年に軍務を退いた。
2018年にアフガニスタンでの戦争犯罪疑惑が報じられ、元伍長は豪メディアを相手に名誉毀損(きそん)の民事訴訟を起こした。2023年に出た判決では、武装していない複数のアフガニスタン人を殺害したと判断された。
元伍長は不正行為を全面的に否定している。刑事裁判の厳格な基準では未検証の、戦争犯罪の疑いについては、「実にひどい」「悪意に満ちた」ものだと述べている。
3年前の名誉毀損裁判は、オーストラリア部隊による戦争犯罪疑惑を裁判所が審理した初めての事例だった。
ロバーツ=スミス元伍長は、アフガニスタンであったとされる殺害行為について、戦闘中に合法的に起きたか、そもそも起きていないと主張した。連邦裁判所で敗れ、控訴したが、昨年、訴えを退けられた。
オーストラリア連邦警察(AFP)は7日、47歳の元兵士を逮捕したと、シドニーでの記者会見で発表。2009年から2012年にかけてアフガニスタンで任務に就いていた間、武器を持たない被拘束者を殺害した罪で起訴する方針だと説明した。
罪状の内訳は、戦争犯罪の殺人罪1件、殺人を共同で指示した罪1件、殺人のほう助・教唆・助言または手配の罪3件の計5件。
AFPのクリッシー・バレット長官は、「被害者が被疑者に撃たれたか、被疑者の立ち会いの下で、被疑者の命令によりADF(豪国防軍)の部下に撃たれたとされることになる」と述べた。
オーストラリアでは、陸軍予備役の少将でもあるニュー・サウス・ウェールズ州最高裁のポール・ブレレトン判事が戦争犯罪疑惑を追及。2020年に発表された「ブレレトン報告書」では、アフガニスタン戦争中にエリート兵らが39人を不法に殺したことを示す「信用できる証拠」があることが明らかになった。
また、2009~2013年に起きた「囚人、農業従事者、民間人」の殺害について、現役と退役した軍人計19人が警察の調べを受けるべきだとされた。
これを受け、特別調査局(OSI)が設置された。ただ、OSIがこれまでに訴追したのは1人にとどまっている。
OSIの調査責任者ロス・バレット氏は、ロバーツ=スミス元伍長の逮捕は「困難な状況」における「重要な一歩」だと述べた。
バレット氏は、「OSIは、オーストラリアから9000キロメートル離れた国の戦闘地域の真っただ中で行われたとされる、まさに数十件もの殺人事件の調査を担っている」と述べた。
「我々が当該国へ行くことはできないし、犯罪現場に立ち入ることもできない。(中略)写真も、現場の図面も、測定データも、発射物の回収も、血痕分析もない。(中略)死亡した人にアクセスする術もない」
バレット氏は、不正行為の疑惑は「信頼され、尊敬されているADFのごく一部」だけにかけられたものだと付け加えた。
「ADFの大半は、国に誇りをもたらしている」
アンソニー・アルバニージー豪首相は7日の早い段階で、この件について、係争中であるためコメントは控えるとした。
そして、「政治が関与しないことが非常に重要だ」と述べた。
2018年に豪メディア「ナイン」が、豪軍の疑惑を最初に報じた当時、ロバーツ=スミス元伍長は国民的英雄とみなされていた。元伍長は、自身のSAS小隊を攻撃していたアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン戦闘員らを単独で制圧したとして、2011年にオーストラリアで最高位の軍事勲章を授与されていた。
元伍長はその後、自身の潔白を証明するため、豪メディアを相手に7年におよぶ法廷闘争に踏み切った。裁判費用は数百万ドルに上り、一部からはオーストラリアの「世紀の裁判」と称されるなど大きく注目された。
しかし連邦裁判所は、いわゆる蓋然(がいぜん)性の基準に基づいて、元伍長が少なくとも4件の殺害に関与していたと認定した。この判断は、控訴審でも支持された。
アンソニー・ベサンコ判事は当時、元伍長が新兵を「血に染める」目的で、武器を持たない男性2人の射殺を2度命じたと認定した。また、両手を拘束された農民を崖から蹴り落として死亡させたほか、捕虜となったタリバン戦闘員の義足を戦利品として持ち去り、後に豪部隊がその義足を飲み物の容器として使っていたとも認定した。








