米市民権の「出生地主義」制限めぐる最高裁審理始まる 判事ら懐疑的、トランプ氏も傍聴

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ダニエル・ブッシュ・ワシントン特派員
アメリカの連邦最高裁判所は1日、ドナルド・トランプ大統領がアメリカで生まれたほぼ全員に自動的に市民権を与える「出生地主義」を制限する大統領令を出したことについて、懐疑的な姿勢を見せた。判事らが、トランプ政権の移民政策の重要な要素を無効にする可能性を示すものと受け止められている。
この日の審理では、判事の大多数が、不法入国者や一時的な国内滞在者の子どもに市民権を与えるのをやめるべきだいう政権側の主張に納得していないように見受けられた。
トランプ政権はかねて、出生地主義の制限が不法移民の抑制に必要だと主張してきた。一方、この大統領令に反対する人々は、この措置が過去100年以上の判例を覆し、アメリカの移民法の基盤を崩すと指摘している。
トランプ氏はこの日の口頭弁論を傍聴した。現職大統領としては異例の行動で、この訴訟の重大さを強調している。
この訴訟でトランプ氏が敗北すれば、連邦最高裁の判断により、2件連続でトランプ政権の政策が後退することになる。同裁は2月、政権が昨年導入した世界的な関税の大部分を無効と判断した。
一方で勝利すれば、アメリカの移民政策を再構築するという公約の実現につながる。
複数の判事から懐疑的な意見
2時間以上にわたる弁論の中で、政権側の代理人ジョン・サウアー訟務長官は、出生地主義を規定する合衆国憲法修正第14条と、その後の判例や議会立法が、すべて出生地主義を誤って拡大してきたと主張し、判事らを納得させようとした。
しかし、最高裁で重要な浮動票をにぎるジョン・ロバーツ長官は、正式な入国書類のない移民の子どもをアメリカ市民権の付与対象から除外する権限がトランプ氏にあるのかと質問した。
「どうやってその大きな集団に行き着くのか、私はよく分からない」とロバーツ長官は述べた。
口頭弁論では、アメリカで生まれ、あるいは帰化し、「その司法権に属する」すべての人は、アメリカ及びその居住する州の市民であると定めた、憲法修正第14条第1節が争点となった。
サウアー訟務長官はこの条項について、駐米外交官の子どもなど、ごく限られた集団にのみ適用されるべきだと主張した。
また、子どもがアメリカで生まれた時点で不法に滞在している親は、出身国に「忠誠」を持つため、アメリカの司法権の管轄には入らないと述べた。
「司法権とは忠誠のことだ」とサウアー訟務長官は述べ、過去の裁判所の意見を引用し、「永住と住所が(市民権を)決める。それこそ裁判所が拘束されるべき基準だ」と主張した。
しかし、この解釈については複数の判事が、アメリカの出生地主義の手続きに対するアメリカ国民および世界の人々の理解が根本的に変わる可能性があると述べた。
エレナ・ケーガン判事は、トランプ政権が出生地主義の司法上の伝統を覆そうとしていると述べた。この伝統は、イギリスのコモン・ローにさかのぼるものだ。
「憲法修正第14条が行ったことは、その伝統を受け入れるとともに、その伝統にいかなる制限も加えようとしなかったことだ。それが明確な根拠だった」と、リベラル派のケーガン判事は述べた。
複数の判事はまた、1898年に最高裁が下した合衆国対ウォン・キム・アーク判決にも言及した。この判決は、アメリカに居住する中国系移民の子どもに市民権を認め、出生地主義を支持した画期的な判断だ。
今回の訴訟で原告側を代表する米自由人権協会(ACLU)の全国法務ディレクター、セシリア・ワン氏もこの判決を引用し、トランプ氏の大統領令は覆されるべきだと主張した。
ブレット・キャヴァノー判事はワン氏に対し、「ウォン・キム・アーク(判決)の解釈について、我々があなたの意見に同意すれば、あなたの勝利だ」と述べた。「単なる短評に過ぎないかもしれないが」。
限定的な判断になる可能性も
最高裁が最終的に出す意見が広範なものになるのか、それとも限定的なものになるのか、現時点では明らかではない。司法専門家らは、憲法に基づく大きな判断と、法令に基づくより限定的な判断の違いは重大だと指摘している。
移民法の専門家スティーヴン・イェール=ローア氏は、連邦議会が1952年に可決した、出生地主義を成文化した法律に焦点を当てることで、最高裁はより大きな憲法論争に踏み込まない可能性があると述べた。
「裁判所は、必要がない限り憲法問題を判断することを好まない」と同氏は述べた。「裁判所は、トランプ氏の大統領令は法令上の理由によって無効だと判断する可能性がある」
最高裁は6月に判断を示す予定。
連邦最高裁が主要な移民訴訟で判断を下すのは、トランプ政権2期目では初となる。同裁はこれまでに他の移民案件も扱ってきたが、下級審に差し戻して再審理を求めてきた。
出生地主義を終わらせようとするトランプ氏の取り組みは、より広範な移民取り締まり政策の一部だ。
しかし、これは多くの右派が長年抱いてきた目標であり、トランプ氏自身も大統領1期目から支持してきたものだ。
この訴訟で勝利すれば、トランプ氏は不法移民の制限という選挙公約を実行していると主張する材料を得ることになる。
一方で、敗北はトランプ氏の移民政策にとって後退を意味する。それだけでなく、政権復帰後、行政権限の積極的な拡大を進めてきた同氏の取り組みに対する、さらなる打撃にもなる。
2月にトランプ氏の大規模な関税を覆したことで、最高裁判事らは、議会や裁判所を迂回(うかい)する白紙委任をトランプ氏に与えるつもりはないことを示した。
トランプ氏は、1日の弁論を傍聴することで、この裁判に対する関心を表明した。
これについては、国内政策に重大な影響を及ぼす審理をめぐり裁判所に影響を与えようとする、不適切な試みだと批判する声もあがった。
トランプ氏は裁判所を出た後、ソーシャルメディアに、「「我々は世界で唯一『出生地主義』で市民権を認めるほど愚かな国だ!」と投稿した。
また、この日にホワイトハウスで行われたイースター(復活祭)の昼食会でトランプ氏は、出生地主義は南北戦争後に「奴隷の子どものために」制定されたものだと語った。
「アメリカ市民になる子どもが57人もいる、そういう中国の富豪のためのものではなかった。当時の人はそんなことは考えていなかった。でも、これを説明しても分からない人たちがいる」











