アジア諸国、続々とイランとホルムズ海峡通過の合意結ぶ トランプ氏の再開期限迫るなか

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オズモンド・チア・ビジネス記者

しかし、こうした脅しが出る以前から、一部の国は自国船舶がこの主要な航路を利用できるよう、イランとの取り決めを確保している。特にアジア諸国は、経済が湾岸地域のエネルギーに大きく依存していることから、合意に至ることに特に積極的だった。

この重要な航路は、米・イスラエルの空爆を受けたイランが報復として、航行する船舶を攻撃すると脅したことで、世界的な緊張の焦点となっている。

この狭い水路は通常、世界のエネルギー輸送量の5分の1が通過する。その海運が混乱して以降、原油価格は急騰している。

トランプ氏は先週、アメリカには湾岸地域の石油は必要ないと述べた。また、同地域のエネルギーに依存する国々に対し、軍艦を海峡に派遣し、輸送再開を主導するよう繰り返し促している。

こうしたなか、ここ数週間で、パキスタン、インド、フィリピンを含む複数のアジア諸国が、一部の船舶が安全に同海峡を通過できるよう、イランと合意した。中国も、自国の船舶がこの水路を利用したことを認めている。

ただし、こうした保証がどこまで及ぶのか、またイランとの合意がどれほど持続するのかは、なお疑問が残る。

海運コンサルティング会社マリスクスのディミトリス・マニアティス氏は、「保証が一部の船舶のみに適用されるのか、それとも特定の国旗を掲げるすべての船舶に及ぶのかは、いまだ分かっていない」と述べた。

それでも、湾岸地域のエネルギーを必要とする国々は今、輸送を再開したいならイランと関与せざるを得ないと認識し始めていると、豪シドニー工科大学のエネルギー経済学者、ロック・シー氏は述べた。

外交の成果

直近では、フィリピンがイランと合意に達した。フィリピンのテレサ・ラザロ外相は、イラン当局がフィリピンの船舶に対し、この水路を「安全かつ妨げられることなく、迅速に通過する」ことを保証したと述べた。

また、2日にイランと「非常に生産的な電話会談」を行った後に成立したこの合意は、エネルギーと肥料の供給確保を支援するうえで「不可欠」だと述べた。

フィリピンは石油の98%を中東から輸入している。イランでの戦争の開始後、国内のガソリン価格が2倍以上に上昇したことを受け、世界で最初に国家エネルギー緊急事態を宣言した国となった

シンガポール国立大学エネルギー研究所のロジャー・フーケ氏は、ホルムズ海峡はアメリカとその同盟国を除くすべての国に開放されているとするイランの主張について、依然として不確実性が残っていると指摘。

そうした状況で、アメリカの同盟国と見られることが多いフィリピンの事例は、イランの「切り分けをいとわない」姿勢を示している可能性がある点で興味深いと語った。

「イランは、ある国の同盟関係と、紛争への積極的な関与とを区別しているように見える」

ほかの国々も、イランとの協議を行っている。

パキスタンは3月28日、同国の船舶20隻について、イランがホルムズ海峡の通過を認めたと発表した。

パキスタンのイスハーク・ダール外相は、「これはイランによる、歓迎すべき建設的なふるまいであり、評価に値する」と述べ、「対話、外交、そしてこのような信頼醸成措置こそが、前進する唯一の道だ」と語った。

イランはまた、インドの船舶が海峡を通過することを公然と歓迎している。

イランの在インド大使館は先週、Xへの投稿で「我々のインドの友人たちは安全な手の中にある。心配はいらない」と表明した。

この投稿は、「ホルムズ海峡の将来を決めるのはイランとオマーンだけだ」とする、イランの在南アフリカ公館による別の投稿に応じたものだった。

インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は3月、英経済紙フィナンシャル・タイムズに対し、インドのタンカーの通航は外交の成果だと語った。

イラン産原油の最大の購入国である中国も先週、一部の船舶が海峡を通過したことを認めたが、イランについて言及せず、船舶の詳細も明らかにしなかった。

中国外務省の報道官は記者団に対し、「関係各方面との調整を経て、最近、中国の船舶3隻がホルムズ海峡を通過した。提供された支援について関係各方面に感謝する」と述べた。

船舶追跡データによると、戦争が続く中でも、アメリカの制裁対象となっているイラン産原油が、数週間で数百万バレル規模で中国に運ばれている。

中国は依然としてイランと友好的な外交関係を維持しており、パキスタンと共に、アメリカとイランの停戦を仲介しようとしている。

依然として分かっていないこと

一部の船舶がどのような条件で安全通過を交渉したのか、また海峡通過のために料金を支払ったのかなどは不明だ。

日本の商船三井はBBCに対し、先週末に液化天然ガス(LNG)を運ぶ同国の船舶がホルムズ海峡を通過したと明らかにした。

同社は、船舶と乗組員全員の安全は確認されていると述べたが、通行料を支払ったのか、またどのようにして安全通過を確保したのかには言及しなかった。

3月にはマレーシアも、自国の一部タンカーがイランから海峡通過の許可を得たと公表。アンワル・イブラヒム首相がイランのマスード・ペゼシュキアン大統領に謝意を示した。

マレーシアのアンソニー・ローク運輸相はこれを、「イラン政府との良好な外交関係」によるものだと評価したと、現地メディアは伝えている。

ただし、他のマレーシアの船舶にも、同様の保証が与えられるかは分かっていない。

マレーシアの石油輸入の約3分の2は湾岸地域からだ。

また、こうした合意が他国にどのような影響を及ぼすのかも、依然として不透明だ。たとえば、通過を認められている国の船籍に切り替える動きが出るかどうかが、その一つとして挙げられる。

マリスクスのマニアティス氏によると、現在、多くのタンカーはパナマやマーシャル諸島といった国の船籍だが、こうした国々は安全通過の保証を確保できていない。

一方、豪シドニー工科大学のシー氏は、これらの合意は「外交的な突破口」を示すものではあるが、問題の解決ではないと指摘した。

同氏は、これらの保証がどれほど持続するのか、また地域における軍事作戦がそれにどのような影響を与えるのかは、いまだに分からないと述べた。