【解説】 トランプ氏のレバノン停戦発表、イスラエルにとっては驚き

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画像説明, アメリカのトランプ大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相
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ルーシー・ウィリアムソン中東特派員(イスラエル・エルサレム)

イスラエル北部では今夜、停戦のニュースが各コニュニティーに広まる中、レバノンからのロケット弾の飛来を警告するサイレンが3回鳴り響いた。

北部の都市ナハリヤの上空では、イスラエルの防空迎撃ミサイルがロケット弾迎撃のために発射され、大きな爆発音が響いた。救急隊員によると、停戦発効前の数時間で、少なくとも3人が破片により負傷し、うち2人は重傷だという。

この場所でも、そして国内各地でも、なぜイスラエルの指導者が停戦に合意したのかと、懐疑的な見方が広がっている。

「政府にうそをつかれたような感じだ」と、ナハリヤの学生ガルさんは言った。「政府は今回は異なる終わり方をすると約束していたのに、結局また、何も解決しない停戦合意に向かっているように思える」。

自宅が昨年、ロケット弾の直撃を受けたというトラック運転手のマオルさん(32)は、「私たちはレバノン政府にチャンスを与えたが、向こうは合意を守らなかった。ヒズボラを武装解除しなかった」と話した。

「私たちがやらなければ、誰もやらない。(イスラエルが)やめたのは残念だ。今回は大きな成果があるように思えていた」

イスラエルはレバノン南部に5個師団を展開している。つい昨日も、師団は前進を続けると、陸軍の主任報道官は述べていた。

今回の停戦発表は、イスラエルにとって予想外だった。安全保障内閣のメンバーにとってすら驚きだったと報じられている。

多くの人が信頼するイスラエル報道機関は今夜、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が停戦発表の直前、安全保障閣僚会議を開いたが、閣議の通知は開始のわずか5分前だったと報じた。

その会議から漏れ出た情報によると、閣僚らは停戦について投票の機会を与えられなかったという。

多くの人はこれを、ネタニヤフ首相がまたもやアメリカのドナルド・トランプ大統領の戦闘停止の要求に屈したとみている。たとえ条件やタイミングがイスラエルの望みと違っていても、要求を受け入れたのだと。

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画像説明, レバノンでは停戦発効後、自宅へ戻る人々の車で道路が混雑した

「イスラエルの国益のため、停戦は強い立場から出さなければならない」。かつてイスラエル国防軍(IDF)参謀総長を務めた、野党ヤシャルのガディ・アイゼンコット党首はそう言う。

「停戦が私たちに押し付けられるというパターンが定着している。ガザ、イラン、そして今度はレバノンでだ。ネタニヤフは、軍事的な成果を外交的な得点に変換する方法を知らない」

ネタニヤフ首相は、停戦を「レバノンとの歴史的な和平合意を結ぶ機会」と位置づけている。同時に、自軍が展開する現地については譲歩はほとんどしていないと強調している。

同首相によると、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、レバノンからのイスラエル軍の撤退と、「静寂には静寂」の原則という、二つの条件を主張していたという。

「前者にも後者にも私は同意しなかった」とネタニヤフ首相は述べた。「これら二つの条件は実現していない。私たちはレバノンで、警備を強化した安全地帯にとどまっている。(中略)私たちはそこにいるし、去るつもりはない」。

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画像説明, 滑走路を歩くトランプ大統領(米メリーランド州アンドリュース合同基地)

イランは、今月上旬にアメリカと2週間の停戦に合意して以来、レバノンにおけるイランの代理組織であるヒズボラに対するイスラエルの軍事作戦の停止を求めてきた。

トランプ大統領は当初、レバノンにおけるヒズボラに対するイスラエルの軍事作戦を「別の小競り合い」と述べていた。だが今週になり、アメリカとイランの協議が難航し、停戦期間が来週終了するのを前に、「イスラエルとレバノンの間で一息つける余裕」を生み出そうとしていると述べた。

ネタニヤフ首相とイスラエル軍幹部らはここ数日、トランプ大統領がイラン側と合意した停戦が、レバノンでの停戦を意味するものではないと熱心に強調していた。

イスラエルでテレビ局チャンネル12が先週実施した世論調査では、回答者の8割近くが、ヒズボラへの攻撃継続を支持しているとの結果が出た。

また、三つの異なる調査からは、イスラエル国民の過半数が、トランプ大統領とイランが合意した2週間の停戦に反対していることが示されている。

イスラエルのマテ・アシェル地域評議会のモシェ・ダヴィドヴィッチ代表は、「合意はワシントンでネクタイをして結ばれるかもしれないが、その代償は(イスラエル北部で)血と破壊された家々によって支払われる」と同国のメディアに話した。

そして、「北部の住民は、国際広報ショーのエキストラではない」と付け加えた。

イスラエルが合意したレバノンでの停戦には、イスラエルが「計画的、差し迫った、または進行中の攻撃に対し、いかなる時でも自衛のために必要なあらゆる措置を取る権利を留保する」と明記してある。これは、2024年11月に合意した前回の停戦と同じだ。イスラエルは当時、脅威とみなした標的を変わらず空爆し続けた。

今回の停戦をヒズボラとの紛争から抜けだすものとみるイスラエル国民は、ほとんどいない。

多くの人はこれを、自分たちのリーダーがまたもアメリカの利益に同調するよう圧力をかけられていることを示す、新たな証拠とみている。そして、主要同盟国アメリカの戦争目標が、必ずしも自分たちのと同じではないことも示すものだと捉えている。