ヴァンス米副大統領がハンガリー訪問、オルバン首相の再選支持 EUを痛烈批判

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アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は7日、ハンガリーを訪れ、オルバン・ヴィクトル首相と会談した。12日に行われるハンガリー総選挙で、同国を16年間率いてきたオルバン氏が政権の座を失うかもしれないとの見方が出る中、ヴァンス氏はオルバン氏への強力な支持を表明するなど、選挙に干渉するような発言を展開した。同時に、欧州連合(EU)を痛烈に批判した。

ヴァンス氏はオルバン氏と並んで記者団の取材に応じ、自分がハンガリーの首都ブダペストに来たのは、オルバン氏を「今回の選挙戦で助けるため」だと述べた。一方で、アメリカは「この選挙で誰が勝っても協力する」つもりだとも述べた。

オルバン氏の主要対立相手のマジャル・ペーテル氏が率いる新興野党「ティサ(尊重と自由)」は、ほとんどの世論調査で大きくリードしている。

オルバン氏はトランプ米政権にとって、ヨーロッパの重要な盟友だ。同氏はEU諸国の中でロシアのウラジーミル・プーチン大統領に最も近い人物でもある。

2010年以来、総選挙に4回連続で勝利してきたオルバン首相は今、約40年におよぶ政治キャリアの中で最も厳しい試練に直面している。

12日の投票を前にオルバン氏を勢いづかせるため、ヴァンス氏は妻ウシャ氏と共にブダペストを訪れた。米高官がハンガリーを訪問するのは20年ぶり。米副大統領夫妻を出迎えたシーヤールトー・ペーテル外相は、オルバン氏とドナルド・トランプ米大統領の友情が両国関係に「新しい黄金時代」をもたらしたと述べた。

オルバン氏の対立候補のマジャル氏は、自分が率いる政党ティサはヴァンス氏の訪問を歓迎するとし、同党が政権を握った際には、アメリカを北大西洋条約機構(NATO)の同盟国として、そして経済のパートナーとして、重要な相手と位置付ける考えだと述べた。

ヴァンス氏はオルバン氏との会談後、EUとウクライナを激しく非難した。

EUについては、「私がこれまで目にした、あるいは耳にした中で最悪の、外国による選挙干渉の一例だ。(中略)なぜなら向こう(EU)はこの男(オルバン氏)を嫌っているからだ」と述べた。

さらに、今回の訪問の「理由の一つは」「(ベルギー)ブリュッセル(にあるEU本部)の官僚による干渉が、実に恥ずべきものだった」からだとも述べた。

その後、オルバン氏の選挙集会で演説したヴァンス氏は、「外部勢力から圧力をかけられたり、何をすべきか指図されたりすることなく、あなたたちが自らの未来について決断してほしいと、我々は思っている。私は誰に投票すべきか具体的に言っているわけではないが、ブリュッセルの官僚たち、あの人たちの言うことに耳を貸すべきではないと申し上げたい」と述べた。

演説の最後には、「週末に投票へ行き、オルバン・ヴィクトルを支持してほしい。彼は皆さんのために立ち上っているのだから」と呼びかけた。

EU加盟国の指導者たちはこの数週間、ロシアによる侵攻が続くウクライナに数十億ユーロ規模を拠出する支援策にオルバン氏が拒否権を行使したことに、不満を募らせてきた。オルバン氏は昨年12月の時点ではこの支援策に同意していた。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「甚だしい背信行為」だと述べた。

それでも、EUの指導者たちはハンガリー総選挙に巻き込まれることは慎重に避けてきた。

今回のヴァンス氏の発言は、昨年2月にドイツ・ミュンヘンで同氏が行った演説で、欧州指導者たちが言論の自由を制限していると非難した内容を思い起こさせるものだった。

ウクライナについて

ヴァンス氏はこの日、ウクライナ政府が外国の選挙に干渉したという、根拠のない主張も繰り返した。「ウクライナの情報機関の内部勢力が、アメリカやハンガリーの選挙を、自分たちに有利になるようにしようとした。彼らはそういうことをするんだ」。

オルバン氏は、ウクライナとウォロディミル・ゼレンスキー大統領への敵対姿勢を、自身の選挙戦の柱としている。

ハンガリー南部と国境を接するセルビアの政府が、ハンガリー国境に近いガスパイプライン「トルコ・ストリーム」付近で複数の爆発物を見つけ、無力化したと発表した際には、オルバン氏や政府寄りのメディアは、ハンガリーのエネルギー供給を狙ったテロ攻撃だと主張した。ウクライナは直ちに、この事案との関連を否定し、「ロシアによる偽旗作戦」だとの見方を示した。

ハンガリーの元情報機関関係者や、ティサのマジャル党首は、オルバン氏が12日の総選挙で再選する可能性を高めるために、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領の協力を得てこの事案を仕組んだのだと非難した。

トランプ氏との関係

トランプ氏とオルバン氏の関係は、2016年にまでさかのぼる。オルバン氏は当時、EUの首脳の中で唯一、米大統領選でトランプ氏を支持した。2024年米大統領選でもトランプ氏の再選を強力に支持したほか、昨年10月には、ロシアの石油大手ロスネフチとルクオイルに対する米制裁をめぐり、ハンガリーを対象から外すよう働きかけるために米ワシントンを訪れた。

トランプ氏は後に、この免除措置が自分とオルバン氏との個人的な取り決めであることを明確にしたうえで、オルバン氏が今回の総選挙で敗れた場合、後任の人物は改めて免除を申請し直さなければならないと示唆した。

7日にヴァンス氏から電話を受けたトランプ氏は、スピーカーフォンを通じてオルバン氏の選挙集会で演説した。オルバン氏は「素晴らしい男」で、自分たちは「素晴らしい友情を築いてきた」と、トランプ氏は語った。

ロシア産エネルギーを輸入

ハンガリーはEU諸国の中でほぼ唯一、ロシア産化石燃料からの脱却を求めるEU本部の要請に応じていない。オルバン氏はワシントン訪問時、米国産の液化天然ガス(LNG)に加え、アメリカの原子力技術と燃料の購入を拡大することも約束した。ハンガリーは東方からドルジバ・パイプラインを通じて供給されるロシア産原油と、南方からトルコ・ストリームを通じて供給されるロシア産ガスに大きく依存している。

現在は、いずれの供給源も問題を抱えている。ウクライナを横断するドルジバ・パイプラインを経由する原油は、1月末以降ハンガリーに届いていない。オルバン氏は、1月27日にウクライナ西部の石油インフラがロシアの攻撃を受けた後、ウクライナがパイプラインの復旧に失敗したことが原因だと主張している。

供給不足を回避するため、ハンガリーは燃料備蓄の放出を余儀なくされている。また、クロアチアからの代替パイプラインを通じて、ロシア産以外の原油を輸入せざるを得なくなっている。

ハンガリー政権のスキャンダル

ハンガリー政権をめぐり最近浮上したスキャンダルも、オルバン氏の人気に影響を与えたとみられる。

流出したのは、シーヤールトー外相と複数のロシア高官との間で交わされた、数年間分の私的な通話内容だ。

通話記録によると、シーヤールトー氏はEU首脳会議での機密の協議の内容を、ロシア政府に定期的に提供していたとされる。また、ロシア政府の要請に応じて、ロシア当局者を制裁リストから外すよう働きかけたとされる。シーヤールトー氏はロシア側との通話について、「通常の外交活動」だと主張している。

オルバン氏はかねてから、「選挙による独裁というハイブリッド体制」を敷いていると、欧州議会に非難されている。反腐敗団体トランスペアレンシー・インターナショナルは、ハンガリーをEUで最も腐敗した国だと評価している。大規模な国家プロジェクトはオルバン氏の側近に配分され、主要メディアもオルバン氏の盟友らに買収されているとされる。

法の支配の欠如に対する懸念から、EUはハンガリー政府への数十億ユーロに上る資金拠出を留保している。