宇宙船オリオンが月への軌道修正成功、「かなり気分はいい」と飛行士 「アルテミス2」計画

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画像説明, 宇宙船オリオンからNASAと交信する宇宙飛行士4人の様子
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米航空宇宙局(NASA)は2日、米南部フロリダ州のケネディ宇宙センターから1日に打ち上げられた宇宙船オリオンが地球周回軌道を離脱し、月へ向かうための軌道変更に成功したと記者会見で発表した。宇宙船に搭乗しているジェレミー・ハンセン飛行士は、「月に向かっているところで、クルーの気分はかなりいいです」と交信でNASAの管制センターに伝えた。人類が地球の周回軌道の外に出るのは、1972年以来初めて。

ハンセン飛行士は、「月に向かっているところで、クルーの気分はかなりいいです」とNASAのライブ配信で世界に伝えた。ハンセン氏はカナダ人で、アメリカ人ではない飛行士が月へ向かうのは初めて。

ハンセン氏は、出発までに求められた忍耐の「力を強く感じている」と述べ、「人類はまたしても、自分たちに何ができるのかを示した」と強調。「皆さんが未来に向けて抱く希望が、私たちを今、月周回の旅へと向かわせている」と続けた。

ハンセン氏は、「月に照らされた地球の暗い側が、とても美しく見えている」とも話した。

「宇宙の配管工」を自称するクリスティーナ・コック宇宙飛行士は、オリオンのトイレに当初不具合があったものの、無事解決したと言い、宇宙で最も重要な道具はトイレのつまりを解消するラバーカップ(すっぽん)だと笑った。

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画像説明, 地球の周回軌道に入った宇宙船オリオンから見た地球

月の周りを飛行する「アルテミス」計画の第2弾となる今回の「アルテミス2」計画では、宇宙船「オリオン」に乗った宇宙飛行士4人が10日間にわたり、月まで飛行し、引力によって地球へと引き戻される、長いループ状の軌道をたどる。

このミッションでは、月面への着陸はない。しかし、月を回って戻る予定で、人類がこれまでに到達した、地球から最も離れた距離の記録を更新する可能性がある。

動画説明, 宇宙空間に入ったクルーの様子

NASAは、宇宙船オリオンが地球の周回軌道を離れ、月へ向かうために月遷移軌道投入(TLI)燃焼を実施したと説明。この燃焼は「完璧だった」と、アルテミス計画を統括するロリ・グレイズ博士は記者会見で述べ、「クルーは元気で、宇宙船も非常によく機能している」と話した。

NASAのフライトディレクター、ジャド・フリーリング氏は会見で、クルーは「順調」で、「何の問題も起きていない様子」だと述べた。

宇宙船オリオンの責任者、ハワード・フー氏は、「すごい、なんて最高の2日間だ」と言い、この24時間はあまり眠れていないと認めた。オリオンが地球の周回軌道に入るまでの行程については「上り坂の飛行は最高だった」と会見で話した。

「TLI実施後は、いつでも地球に戻ることができる」ともフー氏は言い、飛行士たちの安全を確保するために万が一の時にはどう対応するか、何千ものシミュレーションをコンピューターで繰り返して準備してきたのだと話した。

グレイズ博士は、今回のミッションを通じてNASAは「毎日、新しいデータを入手している」と話した。さらに、現時点では懸念材料は「何も検知していない」とし、宇宙船について「できる限りの知見を収集するつもり」だと話した。

すでにNASAのエンジニアたちは、オリオンのこれまでの航行から、手動操作への反応や、二酸化炭素吸収装置など生命維持に不可欠な機器の機能などについて貴重なデータを集めており、いずれも期待通りに動いているという。

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画像説明, 記者会見に臨んだ(着席左から)グレイズ博士、フリーリング氏、フー氏

船内の様子は

NASAの会見では、クルーが管制センターに話す内容も生中継で紹介された。コック飛行士は、オリオンのトイレの不具合を直したことについて、「みんな胸をなで下ろした。(中略)原因は作動準備の問題で、幸い今はすべて順調」だと話した。そして、これまでの航行そのものも驚くほど「順調」だったと付け加えた。

宇宙飛行士たちは、船内の居心地のよい空間に集まり、サンフランシスコに住むルーカス・イー君(8歳)がデザインしたマスコットのぬいぐるみをそばに置いている。

ハンセン飛行士は、初めての宇宙飛行は「並外れた」体験で、「本当に信じられない気持ちでいっぱいで、特別な体験です。もっと早くここに来られたらよかった」と話した。

狭いオリオン宇宙船の内部で、どうやって仮眠を取っているのかという質問に対し、指揮官のリード・ワイズマン飛行士は、コック氏が「コウモリのように宙づりになって」逆さまに眠り、ハンセン氏は「万が一に備えて」モニターの下で眠っていると説明した。

ヴィクター・グローバー操縦士は、宇宙機材と天井の間にある狭い空間に体を収めて眠っているという。

「見た目はおかしいかもしれないけれども、意外と快適」なのだとワイズマン氏は言い、「また無重力状態で眠れるのは気持ちがいい」と話した。

宇宙船は最初の24時間は地球の軌道上にとどまり、乗員が状態を点検する。すべて順調となれば、月へ向かう。

月までの飛行には約4日かかる。乗員らはその間、大規模な太陽放射嵐に遭遇した場合の対処など、緊急時の訓練をする。

月への道のりでは、宇宙船は最も遠い地点で地球から約37万キロメートルの距離まで移動し、月の裏側を回る。

月を接近通過(フライバイ)した宇宙船はやがて、地球への帰還経路を補正するため、穏やかにエンジンを噴射する軌道修正燃焼を行う。

そのおよそ4日後、宇宙船はモジュールから分離し、いよいよ地球に帰還する。高速で上層大気に突入する際には、耐熱シールドが白熱して輝く。

その後、宇宙船はパラシュートを開き、速度を低下させて太平洋への着水に備える。海上では米海軍の艦艇が待機し、乗員とカプセルを海から引き上げる。

動画説明, アルテミス2打ち上げから宇宙船オリオンが地球の周回軌道に入るまでの様子

アメリカは50年以上前の「アポロ」計画で、人類を初めて月面に立たせ、歴史をつくった。月面着陸には計6回成功。月探査という課題は、完全に達成されたかのように思われた。

しかし、アメリカは再び、長い年月と何千人もの人員、膨大な費用をかけて、月面着陸、そして将来的には月面基地建設への道を開こうとしている。アルテミス計画はその一環だ。

背景には、月にある水などの資源の確保や、中国との宇宙開発競争、NASAが2030年代までに実現を目指している火星への有人飛行で月を中継地にする計画などがある。

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画像説明, 今回の計画に携わっている4人の宇宙飛行士。(左から時計回りに)クリスティーナ・コック氏、ヴィクター・グローヴァー氏、リード・ワイズマン氏、ジェレミー・ハンセン氏