イランで200万人が職を失う 米・イスラエルとの戦争が影響
画像提供, EPA
ベフラング・タジディン経済担当記者、BBCペルシャ語
イランではこのところ、大規模な人員削減の動きが続いている。これは、アメリカ・イスラエルとの紛争と直接、あるいは間接的に関係している。
労働・社会福祉省のゴーラムホセイン・モハンマディ副大臣は19日、この戦争によってこれまでに200万人が職を失ったと明らかにした。
広範囲にわたるレイオフ(一時解雇)は、イランの一般市民がオンラインで最も話題にしていることの一つだ。雇用主や政府関係者は、遠回しにこれを「労働力の調整」と呼んでいる。
米・イスラエルとの戦争の影響は、空爆を受けて閉鎖を余儀なくされた工場にとどまらない。製造業や小売業、輸出入関連事業、デジタル分野にまでおよんでいる。
ソーシャルメディアのユーザーたちは、大規模な解雇が起きているのは「ひとけのない地下鉄」や「オフィス近くの駐車場の空きスペースを見ればわかる」などと投稿。「(テヘラン市内の高速道路)ヘマットががらがらなのでよくわかる。1時間半かかっていた通勤が、たったの30分で済んだ」というコメントもあった。
この戦争は個人消費にも悪影響をおよぼしている。多くの人が生活必需品以外の支出を切り詰めており、観光や飲食、食料品以外の小売などの分野で需要が落ち込んでいる。
インターネット遮断による経済損失
開戦以来、イラン当局が実施している国内でのインターネット遮断措置も、比較的活況を呈していた同国のIT・デジタル分野に打撃を与えている。
インターネットの遮断について当局は、安全保障上の措置だと説明。監視や諜報活動、サイバー攻撃を防ぐためだと示唆している。今年初めの反政府抗議に対する残忍な弾圧の際にも、当局は主に抗議者の組織化や情報入手を制限する目的で、同様の措置を取った。
イランのサッタル・ハシェミ情報通信技術相は1月、インターネットの遮断が1日あたり少なくとも50兆リヤル(約60億円)の経済損失をもたらすと述べていた。
この試算によれば、開戦後52日間にわたるインターネットの遮断は、イラン経済に18億ドル超の損失をもたらしたことになる。
インターネットの遮断は特に、女性労働者への大きな打撃となっている。公式データによると、開戦前、イランの就労年齢の女性のうち仕事に就いていたのは9人に1人にとどまっていた。数十万人の女性は、インスタグラムなどのプラットフォームを通じて顧客とつながり、商品を販売していた。
メディア業界や製造業でも
紛争はニュースへの需要を高めている。しかし、そうした状況にもかかわらず、多くのメディアも従業員を解雇している。先週にはイラン労働通信(ILNA)が、ジャーナリスト全員を解雇し、フリーランスとして働くよう求めた。
3月下旬から4月上旬にかけて、アメリカとイスラエルは、アサルーイェとマフシャールにあるイラン最大級の石油化学プラント2カ所と、二大製鉄会社モバラケとフーゼスターンを攻撃した。
戦争の直接的な影響を受けて、数万人が職を失っている。一方で、これらの主要産業に部品などを供給する企業や、これらの産業から資材を調達する企業で働く数十万人も影響を受けている。
その一つはイランの巨大な自動車産業だ。この分野に直接あるいは間接的に関わる労働者は100万人に上ると推定されるが、そのサプライチェーン全体でレイオフが相次いでいるとの報告が寄せられている。
国内の供給が途絶えたことに加え、重要な海上輸送路であるホルムズ海峡をめぐる混乱で、一部の工場は操業を停止し、従業員を解雇せざるを得なくなっている。
中部コム州にある製造会社の幹部はBBCに対し、資材不足により製造を停止するしかなかったと語った。「戦争が終わったら、もとの状態に戻るだろうと期待していた。だが、海外のサプライヤーたちが、船舶がイラン領海へ入ることが許可されないかもしれないと懸念しているので、私たちは資材を船に積むことさえできていない」。
ソーシャルメディア・ユーザーの1人は、義理の姉妹が務めていた繊維会社が、オーストラリアから素材を輸入できなくなり、従業員650人中600人を解雇したと投稿した。
一部の企業は、状況が改善し次第、再雇用するという約束のもとで人員削減を進めていると報告されている。一方で、従業員に無給休暇の取得を強制している企業もあるとされる。
イラン政府は中小企業向けに、従業員1人あたり4億4000万リヤルの融資制度を導入すると発表した。融資は6カ月以内に返済する必要があり、金利は解雇人数に応じて18~35%に設定されている。
幅広い分野で相次ぐ失業は、3月の公式インフレ率が50%を超えた中で発生している。インフレ率は今後数カ月でさらに上昇する可能性が高いと、多くの専門家はみている。
アメリカとイランは現在、一時停戦で合意している。しかし今後、戦闘が再開されたり、イランが厳しい国際制裁下に置かれれば、数千万人のイラン人はより苦しい生活を強いられることになるだろう。米・イスラエルの空爆は壊滅的な被害をもたらす。しかし、影響はそれだけにとどまらず、景気後退や失業率の上昇、物価高騰を引き起こし、危機的状況を一層深刻化させるかもしれない。
注目の記事
このコンテンツは開けません