ローマ教皇の「暴君」発言、トランプ氏に向けたものではないと

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キリスト教カトリック教会の指導者、ローマ教皇レオ14世は18日、世界が「一握りの暴君たちによって荒廃させられている」などと発言した16日の演説について、アメリカのドナルド・トランプ大統領と論争する意図はなかったと述べた。

武力衝突のため甚大な被害が出ている地域を視察した教皇は、「神の名そのもの」を私利私欲のためにねじ曲げて悪用する指導者たちがいると非難した。

この演説は、教皇とトランプ米大統領との対立が続く中で行われた。ただ、演説の原稿は「(トランプ)大統領が私についてコメントするよりもずっと前」の2週間前に書かれたものだと、教皇は説明した。

「しかしまたしても、私が大統領と議論しようとしているかのように受け取られてしまった。私は大統領との議論にはまったく興味がない」と、教皇は18日、アンゴラへ向かう機内で記者団に語った。

トランプ氏は12日、ソーシャルメディアで教皇を激しく攻撃し、カトリック教会の指導者を「犯罪に弱腰で、外交政策はひどい」と評した。初のアメリカ人教皇レオ14世は、かねてから米・イスラエルによるイランでの軍事作戦を公然と批判してきた。

アフリカ歴訪中の教皇は、トランプ氏の発言によって「つくられた政治的状況」に言及し、「正確ではない特定の話」が広がっていると述べた。

トランプ氏との議論に興味はないとする教皇の最新の発言を受け、J・D・ヴァンス米副大統領は、「教皇レオがこのように述べてくれたことに感謝する」と述べた。ヴァンス氏は成人後にカトリックに改宗した。

「メディアの語り口は絶えず対立をあおっている。その一方で、確かに実際に意見の相違はあったし、今後も起きるだろうが、現実は往々にしてはるかに複雑だ」と、ヴァンス氏は付け加えた。

ヴァンス氏は先週、教皇が「暴君」に言及するよりも前に、キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)に「道徳問題に専念」するよう求めていた。

戦争に巨額を費やす「暴君たち」

教皇は16日、訪問先のカメルーンで、武力衝突のため甚大な被害が出ている地域を視察。その後の演説で、「神の名そのもの」を私利私欲のためにねじ曲げて悪用する指導者たちがいると非難した。

レオ14世はカメルーンで発言した際、「いやし、教育、復興に必要な資源はどこにも見当たらない」にもかかわらず、「殺害と破壊に何十億ドルも費やされている事実に目をつぶる」各国指導者を批判。

「世界は、一握りの暴君たちに荒廃させられている。しかし、助け合う無数の兄弟姉妹たちが、世界を支えている」とも教皇は述べ、「破壊するのは一瞬だが、再建はしばしば一生かけても終わらないという事実を、戦争を主導する者たちは知らないふりをしている」と批判した。

また、約10年にわたり政府と反政府勢力の武力衝突が続くカメルーンの「血に染まった」地域で、「不安定化と死の終わりなき連鎖」が続いているとも非難した。

一部では、この演説はトランプ氏に言及したものだと受け止められた。トランプ氏はその後、「教皇は言いたいことを言えばいい。私は彼に言いたいことを言ってもらいたい。ただし、私は同意しないこともできる」と記者団に述べた。

トランプ氏と教皇の対立

教皇は先に、イランが戦争終結とホルムズ海峡の開放に向けたアメリカの要求に応じなければ「文明が丸ごと滅ぶ」とトランプ氏がイランを脅したことに、懸念を示していた。これに対しトランプ氏は12日、教皇に対する長文の批判をソーシャルメディアに投稿した。

その中でトランプ氏は、「(自分は教皇の)大ファンではない」とし、教皇を「犯罪に弱腰で、外交政策もひどい」と非難した。また、自分をイエス・キリストのように描いた人工知能(AI)生成画像を投稿したが、その後削除した。

教皇はアフリカ歴訪で、4カ国11都市を訪れる予定。昨年の教皇就任以来、2度目の主要な外遊で、アフリカ各国でカトリック教会が重要な位置を占めていることを示している。

2024年の統計によると、世界のカトリック信徒の2割以上にあたる約2億8800万人がアフリカに住んでいる。